
坂本香織は、2024年に刷新したDaiichi Lifeグループの理念の浸透と新グループブランド「Daiichi Life」のブランド戦略を担当しています。異業種を経て第一ライフグループに復帰した、そのユニークな経歴とともに、理念の浸透と新しいブランドが育まれていくことへの想いを語ります。
社会人としてのスタートは第一生命。
しかしその後、転職――
就職活動をする中で、第一生命に入社したいと感じていました。お会いした社員の方が皆、丁寧に対話をしてくれて、オープンでフラットな良さがある会社だなと感じたからです。就職が決まった時はすごく嬉しかったのを覚えています。ちょうどこの日比谷の本社の建物が新しくなったタイミングで、晴々とした気持ちでした。
入社して融資業務部(当時)という、貸付を取りまとめる部門に配属になりました。当時、融資は運用資産のなかでも多くの割合を占めており、とても重要な仕事を担当させていただいているという緊張感を持つと同時に、私には経済や金融に関するバックグラウンドがなかったので、必死で勉強をしました。
ちょうどバブルが弾けた後の入社だったので、日本経済が急速に悪化し不良債権が増えていく状況でした。自分では先行きがわからず、不安な気持ちに捉われるのと同時に、優秀な先輩や同僚に比べて仕事がうまくできていないのではという劣等感がありました。第一生命という会社が好きでしたし、上司や先輩が丁寧に仕事の仕方や財務の知識などを教えてくれていましたが、どうしても自分には無理があるのではないかという気持ちになってしまい、ついには会社を辞めました。今思えば、自分自身の視野もまだとても狭く、見えているものが少ないなかで退職してしまったのですが。

異業種で広報・IR、ブランディングに関わる業務に。
理念を大切にする企業姿勢に惹かれて。
退職後は、業種が全く異なる転職先のベネッセホールディングスと良品計画で、広報やIR、サステナビリティ、ブランディングの業務に携わってきました。外に出て改めて感じたのは、第一生命で身に付けた仕事の進め方や、財務の知識等が活かされて、ビジネスパーソンとしての土台になったことです。ベネッセでは、子供向けの事業部門で商品企画やマーケティングのスキルを身に付け、その後経営企画や広報部門等のコーポレート部門で長く仕事をしました。その中でも、コーポレートコミュニケーションの仕事が大好きで自身の軸と考えるようになりました。
仕事をするうえで大事にしているのは「企業理念」です。例えば勤務していたベネッセホールディングスも良品計画も、理念ドリブン(常に理念を基点として、意思決定や行動を導く考え方)の企業です。私自身もコミュニケーションの担当として、社員が理念に共感し力を発揮できるようにということに一番力を尽くしました。企業の大きな危機対応なども経験する中で、理念の実践こそが企業ブランドの構築につながっていくという信念を持つに至り、仕事をしながら大学院で「企業理念とブランドの関係性」を証明する研究も行いました。これからも理念に共感できる企業で仕事をしたいと考えていたところ、ある日第一生命への再入社のご縁がありました。第一生命には「一生涯のパートナー」という言葉があり、私の入社した90年代から社員皆がとても大切にしていました。私もずっと、この言葉を覚えていました。
最初は、退職した自分が戻るなんて、とんでもないと思いました。一方で、私は第一生命を遠くから見ているファンのひとりでした。第一生命が他社に先んじて積極的に海外進出をしていることには驚きましたし、株式会社化をしたときには「さすが第一生命」という気持ちになりました。また、コミュニケーションの仕事をする中で折に触れ「第一生命は今どんな発信をしているのか」というのをベンチマークしていましたが、共感できる発信が多くありました。第一生命は真摯でオープンでかっこいい、応援したい会社だと考えていたのです。
その第一生命グループが、改めて理念やブランドについて検討しようとしているという話を聞き、その仕事をぜひやってみたいという気持ちに抗えませんでした。全力でその仕事に取り組みたいと強く思いました。

2023年、第一ライフグループに再入社。
自分なりの価値を“空き地”で発揮することを目指す。
再入社したときは正直緊張しましたが、皆がニュートラルに接してくれて、自分たちの持っている知識などを惜しみなくシェアしてくれました。やはりオープンマインドな会社だと感じました。生命保険という大きな事業を沢山の部門が連携して発展させてきた会社であり、人事異動も多かったので「他者と共創する」「新しいものを受け入れ生かす」ことが得意なのだということを感じます。
時を経て変わっていたのは、自分たちが変わらなくてはと、会社として強く考えているところだと思います。2030年に目指す姿として「グローバルトップティアに伍する保険グループ」、「時価総額10兆円」を目標として掲げています。キャリア採用も増えて社員、役員のバックグラウンドや専門性が多様化し、組織も以前よりもフラットになり意思決定のスピードが速く、大きな目標向かい事業領域を広げ進化していかなくてはという、強い意志と健全な危機感を感じました。
私は、「みんな違って、みんないい」(金子みすゞ『私と小鳥とすずと』より)という価値観を大切にしています。第一生命グループには生命保険や金融に関する様々な専門性を持っている社員が沢山いますが、これは私にはないものです。一方で私は、理念やブランドやコミュニケーションに関する専門性を発揮して貢献したい。違うバックグラウンドや観点、違う専門性を持った人が、大きな目標に向かってそれぞれ力を発揮することで、組織は強くなると思います。「ブランド」専門の担当というのもこれまで当社グループにはなかった、言わば「空き地」。「空き地」人財、と自分でも言っていますが、空き地から新しい価値をグループにもたらしていきたいです。
企業には、財務的価値や経済価値と共存しなくてはいけないものとして情緒的価値があると思います。ブランドは人の心を動かす、情緒的価値を生み出す仕事です。人の心を動かすためには、自分たち自身の心が動く仕事をすることをとても大切にしたいと感じています。


理念からブランドをつくっていく。
新しいフェーズを切りひらくために。
刷新したグループ理念におけるパーパス(社会における存在意義)は「共に歩み、未来をひらく多様な幸せと希望に満ちた世界へ」です。Daiichi Lifeグループはこれまで「一生涯のパートナー」としてお客様に「寄り添う」ことを大事にしてきましたが、これからは寄り添うだけではなく、一人ひとりの人生の「未来をひらく」グループになるという意思をこのパーパスに込めています。
“Group Chief Brand and Culture Officer”として、理念をグループの社員と共有し、その先にブランド価値を構築するのが私の役割です。理念とブランドは切り離れたものではありません。社員一人ひとりが企業理念を実現しようという志をもって、行動にうつしていく。そうすることで、例えば営業活動を通じて、あるいは商品サービスを通じて、地域活動で、SNSでの発信を通じて…等々、それぞれの接点で、お客様をはじめとするステークホルダーの方々が、Daiichi Lifeのブランドに共感したり、いいねと思ってくれていたりします。そうしたことの積み重ねで、ステークホルダーの心に中にブランド価値が創られていきます。
カルチャーについてもこのプロセスと一体です。理念や目指す姿の共有を行うとともに、新しい価値・挑戦を奨励・称賛する仕組みづくりを行うことで、社員が多様性を発揮する土壌を創っていきたいと考えています。理念に一人ひとりが共感し、自ら考えて心から「良い」と思えることを、ゼロベースで考え実践する「Think Differently」のカルチャーを形成し、その一つひとつの行動がブランドにつながる。すべてが一連のものだと考えています。
第一生命という歴史あるブランドを、グループが自らの意志を持って進化するプロジェクトです。次の新しいフェーズを切りひらくためには絶対に必要だと信じています。大きな変革は社員の一人ひとりの活躍の幅が広がるタイミングなので、社員の皆さんのわくわく感や挑戦する喜びを、ぜひ引き出していきたいです。
私にとって一番のモチベーションは、「昨日まで見えなかった世界を見に行くこと」です。そういう意味で、新しいブランドを育てることは、難しいこともたくさんありますが、自身も一緒に働く仲間も新しい世界を見に行ける。今はまだないものを、社内外多くの人との対話を重ねて一つひとつ形にしていくプロセスは、ものすごく楽しい時間です。

新ブランドをエネルギーに、思い切って挑戦する。
“やんちゃさ”を生み出していきたい。
大学院では、企業理念に社員が共感し実行することで本当にブランド価値は向上するのかを分析し、研究していました。実際に、理念の浸透を行うことでブランド価値が上がることを証明できたので、自信を持って取り組むことができていますし、みんなと一緒に理念をシェアしながらブランドをつくっていくことが、自分のライフワークだなと心から感じています。
新しい「Daiichi Life」のブランドのもとに、会社の提供する価値をどんどん広げていきたいと思います。新しいブランドが何かひとつのきっかけやエネルギーになって、社員が新しい分野に思い切って挑戦したり、今まで取り組んできたビジネスを新しいやり方で提供することを試みたり、会社の中が良い意味で“やんちゃ”になっていくことを実現したいです。お客さまや社会に向けて、躊躇せずにやってみようとアクションにつなげられる“やんちゃさ”を生み出していきたいと思っています。
私がプライベートで私が大切にしているのが、生け花の時間なのですが、参加している生け花のコミュニティでは、花を生ける際「先にこういう形をつくりたいと考えるのではなくて、“一人ひとりのお花”が可愛く美しく見えるように、お花と対話をしながら生けましょう。」という「花との向き合い方」があります。「人」についても同じように感じています。最初から「こんなチームをつくりたい」と枠にはめるのではなく、一人ひとりに、仕事一つひとつに、対話を重ねて向き合っていきたい。対話の中で感じることを大切に形にしていくことで、今まで見えなかった景色にたどり着けると信じています。(談)




