
あなたは60代に突入しました。そろそろ、早目のリタイア生活を始めた人もいるかもしれません。すると突然、1日が長くなります。それは楽しい反面、どこか奇妙な空虚さも感じさせます。多くの人にとってリタイアとは、何十年もの働く日々を終え、待ちに待った安息が得られることから始まります。しかし、その後にやってくるのは静寂です。「9時から5時まで」の生活リズムは消え去り、職業を軸に築き上げてきた自身のアイデンティティが崩れ始めます。そんな時、驚くほど多くの人が、後期キャリアの「リセットボタン」を押すことを決断し、再び働き始めるのです。
仕事に戻る理由はさまざまで、必ずしも「働かざるを得ないから」というわけではありません。お金が関係することも多いですが、時には、心の奥底にある何かが、再び仕事に向かわせるのです。
AARP(旧称:アメリカ退職者協会)が発表した2025年冬の調査結果によると、退職者のうち約7%が「過去6カ月間に仕事に復帰した」と回答しており、さらに多くの人が、積極的に仕事を探したり、復帰を計画したりしています。65歳以上の米国人のうち、ほぼ8人に1人が、すでに仕事に復帰しているか、2026年中に復帰する意向を持っています。復帰の動機は経済的な事情だけではありません。多くの場合、それは精神的なものです。後期キャリアの再構築において、精神的な要素は無視できません。そして、うまく進めれば、そのような転換は驚くほどの満足感につながるのです。
後期キャリアの再構築が、あなたに必要かもしれない理由
退職移行期の専門家で、『Encore: A High Achiever's Guide to Thriving in Retirement(アンコール:ハイ・アチーバーがリタイア生活を成功させるためのガイド)』という著書があり、弁護士資格も持っているエリザベス・ゼリンカ・パーソンズ氏は、「退職時に、経済的な準備が計画されており、それが適切に実行されている場合、『リタイアを撤回』する動機は、経済的な事情というより、社会に関わり貢献したいという欲求がほとんどです」と述べます。「一般的には、個人的な目的意識に沿って目標を設定するほうが、はるかにモチベーションを感じやすいのです」
それは事実でしょうが、リタイアは、あなたのアイデンティティにとって大きな打撃になる場合もあるかもしれません。長年にわたり、仕事での役職や給与、専門知識が、あなたの自己像を暗に形づくってきたからです。仕事を離れれば、最初は解放感を覚えるかもしれませんが、ある朝目覚めた時に、職場で頼りにされていた自分を懐かしく思っていることに気付くのです。論文データベース「PubMed」に収録されている2025年の研究によると、リタイア生活に入ることは、時として、目的意識や社会的つながりの喪失に対する静かな悲しみをもたらします。こうした「気分の落ち込み」は、一部の退職者には深刻な影響をもたらす可能性がありますが、段階的なリタイアや、フルタイムまたはパートタイムでの仕事復帰は、自分を取り戻す助けとなり得ます。
しかし、リタイアは単純なものではなく、そこには往々にして、不安と期待、そして将来を考え直したい気持ちが入り交じります。さらに、職場における「エイジズム」、すなわち年齢に基づく差別という、非常に現実的な懸念もあります。若い採用担当者は、あなたの経験を強みと見なしてくれるでしょうか? それとも、オーバースペックで現場から浮いていると判断されるでしょうか? また、新しいテクノロジーやプラットフォームを習得しなければならない、あるいは、全く異なる職場文化に適応しなければならないとなれば、それまでに築いた自信が揺らぐこともあるでしょう。
それ以上に大きな影響を持つ可能性があるのが、自分への不安です。「自分には、まだ働く能力があるのか?」「再出発するには年を取りすぎているのではないか?」「リタイア生活を続けていればよかった、と後悔しないだろうか?」という疑問が、決断をためらわせるのです。
しかし、中高年の勤労者に関する2025年の調査によると、思い切って一歩を踏み出した人は、幸福度が高く、ストレスは少なく、さらには新たな目的意識を見いだしています。2015年の調査でも、40歳を過ぎて転職した人の90%が、転職を成功と捉え、満足しているとの結果が出ています。実際、専門家の間では、本人のスキルや価値観と合致した仕事が得られた場合、頭脳の明晰さを高めるほか、認知機能の低下を防ぐのに役立つ社会的つながりや、生活リズムをもたらすというのが、大多数の一致した見解となっています。
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「やりたい仕事」を現実と両立させる
現役復帰する人のなかには、キャリアの移行期や空白期間を埋める一時的な「つなぎ」として、単発のコンサルティング業務やメンタリング、パートタイム職などから仕事に復帰する人がいます。なかには、もっと思い切った一歩を踏み出す人もいます。例えば、企業の元幹部がコミュニティカレッジの講師になったり、引退した看護師が長期介護を必要とする家族と契約を結んだり、エンジニアがYouTubeを通じてワークショップを開いたりといったケースです。
彼らに共通しているのは、その選択に「意図」が存在することです。つまり、外的な事情に押される形ではなく、熟慮した上で、意図的にキャリアを再構築することを決断しているのです。リタイア後の仕事復帰は、退屈しのぎや、生計を立てるためというケースもありますが、ほとんどの場合、成功するキャリアの再構築とは、「今の自分にとって何が大切なのか」という問いに答えることにほかなりません。どのような形の貢献であれば、今の自分にとって有意義だと感じられるでしょうか。
もちろん、後期キャリアの再構築が、すべて順調に行くわけではありません。時には、以前と同じような有害な環境に戻ってしまうこともありますし、若いチームとの関係性に苦労することもあります。こうした余計なストレスが重なり、仕事復帰は正しい選択だったのか、と自問することもあるでしょう。
しかし、雇用主の側も、ようやく目を覚まし始めています。労働市場が逼迫するなかで、より多くの企業が「オーバースペック」を理由に求職者を拒まなくなっているのです。ベビーブーマー世代から、X世代後期の人たちは、組織に関する知識や、プレッシャー下でも冷静さを保つ能力、そして、若いチームが時に必要とするメンタリングなど、価値あるものを職場にもたらします。企業が、人の経験が備える真の重要性を認識するのに伴い、フレックスタイム制やパートタイム勤務、リモートワークの選択肢が広がりつつあります。
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後期キャリアの再構築に向けた心の準備
まずは、正直になることから始めましょう。パーソンズ氏によると、キャリアの再構築を望む起業家のなかには、目標の優先順位を「利益」から「パーパス(長期的目標)」へと切り替える人たちがいて、彼らの多くが、利益追求型の職務から、ミッション主導型の職務にシフトしています。「そうすることで、自身の持つスキルを、価値観を重視する組織と結び付けやすくなります」とパーソンズ氏は語ります。キャリアの第二幕を迎える起業家はしばしば、個人的なパーパスに沿って目標を設定するほうが、はるかにモチベーションを感じます。「収益の最大化を目指して事業を拡大するのではなく、特定のコミュニティや世界全体にとって意義のあるビジネスを立ち上げたり、そのような仕事に復帰したりするのです」
実際にキャリアの再構築を経験した人たちと話してみましょう。無料または安価なオンライン講座やボランティア活動に参加してスキルをアップデートし、自信を取り戻しましょう。小さな成功の積み重ねが、自信を速やかに取り戻してくれます。自分のストーリーを見直しましょう。あなたはゼロから始めるのではありません。数十年にわたる知恵を活かそうとしているのです。
何より重要なのは、新しいことへの挑戦を、自分に許すことです。後期キャリアの再構築を、「すべてか無か」で考える必要はありません。単発のコンサルティング業務や、報酬が発生する個人プロジェクト、あるいは、フルタイムの重圧を受けずにやりがいを感じられるフリーランスの仕事など、いろいろな働き方があります。
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新しいキャリアを始める
後期キャリアの再構築は、必ずしも収入を得るだけが目的ではありません。多くの人にとってそれは、人とのつながり、パーパス、そして、いまだに価値あるものを提供できる自身の誇りを保つことなのです。寿命が延び、年齢に対する意識が変化している現在では、段階的な仕事復帰や現役復帰は、退職生活に適応できないというサインではありません。それは、社会との関わりを保つための、賢明で健全な方法です。
資産形成に関する情報を提供する「Income Insider」の創設者イリル・サリヒ氏は、「キャリアの再構築は、最初は気が重く感じるかもしれません。そうしたハードルを乗り越えるには、『一からやり直す』という考え方を改める必要があります」と指摘します。「後期キャリアの再構築を成功させるためには、社会についていくための試みとしてではなく、自身の強みや長い人生を軸にして、自分のキャリアを設計し直すこととして捉えることが大切なのです」
この記事は、KiplingerのKathryn Pomroyが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。



