
第一生命所属の、スケートボード女子パークの四十住さくら選手と、ブレイキンのShigekix(半井重幸)選手。おふたりが生まれた2002年は、第一生命が創立100周年を迎えた年でもあります。新たな100年を歩む第一生命とともに、世界のトッププレイヤーとして活躍するふたりが、数々の挑戦のエピソードを交えながら新しい風を届けてくれました。
よいことも悪いことも全部話す
──ご自身の好きなところは、どんなところですか?
四十住:どんな状態になってもよい方向へポジティブに考えるのは、自分自身の好きなところかなと思います。
Shigekix:確かにポジティブなイメージがありますね。
四十住:悪い方向に気持ちが落ち込むこともあるけど……。
Shigekix:そうなんだぁ。ずっとネガティブ、みたいな時もあるの?
四十住:あまりないけど、やっぱり負けた時とか、ケガをした時は1回(気持ちが)落ちる。でも、落ちることによってまた楽しくなっていくから、初心にかえるというか。
Shigekix:プレイヤー気質。結構、そこは僕も同じかなと思います。落ちている時は、ひとりで考えるタイプ? それとも家族や仲間に話す?
四十住:よいことも悪いことも全部、親に話します。
Shigekix:遠征も一緒に行くからね。
四十住:もう常にお母さんと一緒に動いているから。自分の考えていることも全部話すし、お母さんの意見も全部聞く。お互い思ったことはすべて言うみたいな感じ。
Shigekix:まあ、一番見ているから、だいたいもう言わなくてもわかっていると思うけど。
四十住:そう。「こんなこと考えてるやろ」って、考えていることを言う前に先に突っ込まれる(笑)。
──Shigekixさんは、落ち込んだ時はだれかに相談したりしますか?
Shigekix:僕も話しますね。以前は全く話さない、完全に自分だけで考えるタイプだったんです。昔はそれでよかった。でも今は、ありがたいことに内容や規模がどんどん大きくなり、フェーズが上がっていく中で、取り組む段階からいろいろな人に協力してもらいながら一緒にやっています。なので、まわりの人たちに僕の気持ちを聞いてもらうというよりは、共有するかたちで会話することが増えました。
四十住:そうなんだ。自身の好きなところは?
Shigekix:集中力ですかね。好きというか頼りにしてます。小さい頃から集中すると決めたら、自分でスイッチを押す特技みたいな感覚があって。物心ついて最初は絵を描くことに一番興味を持ったので、「もうご飯だよ」って言われるまで、5時間もずっと描いていました。没頭する感覚が好きだったし、今もそれがダンスの練習に活きているところがあります。
四十住:いいなぁ。ちょっとそれ欲しいな(笑)。


「好き」という気持ちを第一に
──競技人生で第一に考えてきたことはなんですか?
四十住:「一日一日を無駄にせずにがんばろう」って。スケートボードで世界を目指すにあたって、時間は戻ってこないから、ずっと今もそれを考えながらやっています。
Shigekix:すばらしい。僕が第一に考えてきたことは、ブレイキンを最初に見た時の衝撃と、やり始めた時の「これ楽しい!好きだな」と思った自分の気持ちをずっと大事にしたいなと。年齢とともにキャリアを重ねていく中で、いろいろがんばる理由みたいなものが増えていきます。そういうものがどれだけ膨らんでいっても、「好きだからやっている」という気持ちだけは失わないようにしたいと思っています。
四十住:うん、すごくわかる。
Shigekix:ほかの理由が何十個、何百個あったとしても、この「好き」がなくなってしまったら、一気にそのほかの理由も、自分を突き動かしてくれるものではなくなるんじゃないかなって。同じプレイヤーなのでわかると思うんだけど、キツイ瞬間や、ケガとかして気持ちが落ちている時も、「好き」っていう気持ちを第一にしているので、早く抜け出そうとポジティブになれるんだと思いますね。
四十住:ブレイキンが嫌いになったことはある?
Shigekix:ないなぁ。やめようと思ったことも1回もなくて。ある?
四十住:うん、パリで負けた時は2カ月やめた。ずっと毎日やってがんばったけれど、報われなくて予選落ちして。初めて何も考えたくなくなった。
Shigekix:どうやって戻ってきたのか気になる。
四十住:その2カ月間はすごく怖かった。「もう戻れないのかな」みたいな気がして……。でも、「子どもたちのイベントが長野であるから、滑らなくてもいいので遊びに来てよ」って連絡が来て。それで行ってみたら子どもたちがみんな「一緒に滑ろう!」って言ってくれて、それで戻ることができました。
Shigekix:すごくいい話だね。スケートボードを始めたのは何歳から?
四十住:12歳から。
Shigekix:巡り巡って、その頃の子どもだった自分にも突き動かされたのかもしれないね。
四十住:このイベントに誘われなかったら、どうなっていたんだろうって思う。そこから、やっぱりスケートボードは楽しいし、もう1回がんばろうってなって。そこで助けられたことで、今は子どもたちのためにやりたいことがいっぱいあるっていう考えにもなりました。
Shigekix:すばらしい。
── Shigekixさんも子どもたちへの活動を続けていますよね。
Shigekix:はい。全国の小中学校を訪問するワークショップツアーをやらせてもらっています。今、僕にとってはとても充実感のある取り組みで、大会に出場するのと同じくらい生き甲斐になっていて。子どもたちから受け取るエネルギーというか、子どもたちに気付かされることがすごく多い。ブレイキンに興味を持つ持たないは別にして、体験会を通して彼らの夢や目標のために背中を押してあげることができればと思っています。


本気スイッチが入って挑戦が始まる
──生きていくうえで、これだけは絶対に譲れないと思うものは?
四十住:スケートボードが好きなところかな。大好きだっていう気持ちは譲れない。大事にしていることでもあるし、自分が一番好きだろうなって自信もある。
Shigekix:「好きっていう気持ちを譲れない」は、いいフレーズですね。これを超えるものはなさそう(笑)。僕は、「挑戦する」ことがやっぱり譲れないですね。将来的にブレイキンという枠を超えていく可能性もありますけど、どんな立ち位置であっても、やっぱり「挑戦する」という自分単位の行動は絶対にやめないだろうなと思います。常にテーマは「挑戦」っていう感じです。
四十住:うん、いいなぁ。
Shigekix:例えば、世界タイトルを獲った人がいたとして、僕はその人のその後に注目しているんです。その結果を最後の結果にしてしまうのか、あるいはそれを新たなスタートにしていくのか。僕自身は、毎年大会が繰り返されていても、キャリアは積み上げていくものだと考えています。僕が尊敬している人たちは、大きな結果を残した後にどこに向かっていくのかをすごく大事にしているなと思うので。
──最初に「挑戦しよう」と思ったきっかけは?
四十住:ちょうどスケートボードに乗り始めたのが小学校6年生の夏ぐらいで。庭で遊びながらやっていたんですけど、自分の中で「大会に出たい」という気持ちが強くなってきて。でも、親の協力なしでは練習する場所に行くことも大会に出ることも無理だったから、中学校に入学する時に家族会議をして。親に「本気で日本一になるくらいの覚悟で目指すなら応援するけれど、遊びなんだったら部活やって」と言われて、私は「部活じゃなくてスケボーで日本一になる」と。それがきっかけで、本気スイッチが入ってアスリートへ変わったんです。
Shigekix:すばらしい!
四十住:日本一になるためにやらないといけないメニューができていて、お母さんは「これができないならやめてもらうよ」と。ペットボトルを飛ぶのを50回とか、親が作ったメニューで最初は時間がかかって嫌だったけれど、1週間後にはうまくなっているのがわかり、どんどん楽しくなってきて。親は「日本一は無理だからやめる」って私が言うのを待っていたらしいんだけど(笑)。
Shigekix:なるほど。
四十住:お金の面でも、ボード1本あったら何年も使えると思っていたのが、実はそうではないし、結構高い。シューズも毎日滑っていたら1週間で破れるし……。これは後から聞いた話だけど、「さくらでお金持ちになるか、さくらで家がなくなるか、どうする?」ってなった時に、お兄ちゃんが「いけるとこまで応援したれよ」って言ってくれたらしいです。
Shigekix:とってもいい話。愛にあふれてる。僕の場合は、ブレイキンを始めたのが7歳の時。当時はまだいわゆるキッズのダンサーはとても少なくて、関西圏で本気でやっている人は両手に収まるくらいしかいませんでした。その中でも僕は一番経験が浅くて、「自分の位置は今、崖っぷちか」と。で、自分が見えているこの10人の中でまず1番を目指そうと思ったんです。それが世界の全部じゃないのはわかっていたんだけれど、そう決めたのがスイッチが入った瞬間だったかなと思います。それからだれよりも練習して、時間を割いて、10人だったのが次は西日本の同世代が相手になり、次に全日本規模になり、だんだん規模感が大きくなっていきました。常に「この中で1つ頭抜けよう」と、同じことを繰り返してきた気がします。
──そして、昨年はついに世界制覇。おめでとうございます。
Shigekix:ありがとうございます。きっかけを作ってくれた最初の10人は、今も限られた同世代の、大切な仲間です。



可能性を広げていくために大事なこと
──これから先の景色を、どんなふうに思い描いていますか?
Shigekix:プレイヤーとしてはもっともっと高みを目指していきたいし、大会にも挑戦していきたいです。それと同じくらい、ブレイキンをやり始めようとしている子どもたちに積極的に影響を与えていきたいなと。もちろんブレイキンに関わってない子どもたちにも触れてもらって、自分をさらけ出したり、なにかを夢中でやったり、目標や夢に向かって走ったりするのってめちゃくちゃかっこいいし、楽しいと伝えたい。この先の人生の活力や学びにしてもらえたらと思います。
四十住:女子のスケーターで、年上や同い年で続けている人があまりいないんですよ。で、これから自分がどうしていきたいかとなった時に、先輩とかがいないから、逆に自分が思っている通りのことができるなって。そう思ったら、次世代のために動くのが一番いいなと今は考えています。スケートボードの技術も次世代から吸収できるしパワーももらえる。自分のためにもすごくいいかなって。正解もないしなかなか難しいけれど、新しい道を自分で作っていけたらすごいことだなって。
Shigekix:うん、ワクワクするね。
──これからさらに可能性を広げていくためには、どんなことが大事だと思いますか?
Shigekix:限界を設定しないことだと思います。
四十住:うん、ゴールを決めない。
Shigekix:限界を決めない。ゴールを決めない。
四十住:一緒やん!(笑)

2002年3月15日生まれ。兄の影響で小学6年生からスケートボードを始め、2018年に開催された 「全日本選手権」「アジア大会」「世界選手権」で第1位に輝き、期待の若手として注目を浴びる。世界ランキング2位で挑んだ東京オリンピックでは、 スケートボード女子パーク部門にて見事金メダルを獲得。初代女王に。



