【AI時代】「人とのつながり」こそが最高の投資。家族や地域との関係をどう守り、育むか?

株式会社第一ライフグループ

私たちは数十年前から、「利便性」を追求するアルゴリズムをひたすら磨き上げてきました。そして、知らず知らずのうちに、生身の人との頻繁なやりとりからは遠ざかってきました。でも本当は、地域社会や職場を支えているのはこうした生身の交流なのです。

私は、社会貢献事業に関わる25年以上のキャリアを通じて、気候変動や、銃による暴力の抑制、生活習慣病の防止、働き手の間にある機会不均衡の是正などの社会課題に取り組んできました。確かに、これらの問題が待ったなしの課題であるのは間違いありません。それでも、「社会的孤立」という真空状態が生じているなかでは、どの問題であれ、解決することはできない、と私は確信しています。私たちはデジタルな手段によって、かつてないほど便利な社会を作り出してきました。食料品を届けてもらうのにアプリを使い、セルフレジに並び、ストリーミングサービスを利用しています。また、電話で直接話すよりも、テキストメッセージのほうを好んでいます。今や、インターネットを通じて、過剰なほどに接続されています。それなのに、孤独と不安を感じる人の割合は、人類史上でも最も高いレベルに達しています。世界保健機関(WHO)の「社会的つながりに関する委員会(Commission on Social Connection)」の報告によると、孤独にさいなまれている人の割合は、全世界で「6人に1人」に達するとのことです。

こうした状況にさらに大きなシフトをもたらしているのが、生成AIやAIコンパニオンの普及です。ChatGPTだけでも、1週あたりユーザー数が延べ8億人以上に達するなかで、私たちが情報を探し、他の人とコミュニケーションをとるやり方そのものに、真に根本的な変化が起きています。これからは、AIテクノロジーの進展が、お互いの人となりや関係性に関する理解を深めるための架け橋の役割を果たす時代になるかもしれません。

けれども、現実世界で行うべき交流を、デジタル界のやりとりで置き換えてしまったら、「お互いを思いやる」という人間らしい部分を失うリスクは生じないのでしょうか? この問いは、企業の取締役会では全く顧みられていません。しかし、人と人を結びつけるつながりの喪失は、このまま気づかれず、対処もされないようでは、大きなビジネス上のリスクになるかもしれません。AIの時代にさらに深く踏み込んでいくなかで、私たちは、人と人のつながりへの投資を真剣に検討すべきでしょう。職場での人間関係が崩壊するのを防ぐためにも、それは必要です。

違いを乗り越えて、問題を解決するために

社会制度への信頼構築、そして地球や地域規模の問題解決は、人々が違いを乗り越えて協力できるかどうかにかかっていることは周知の事実です。それゆえに、筆者が率いるワークデイ財団(Workday Foundation)でも、助成金の拠出先を決める戦略の主要な柱として、人と人との実際のつながりを重視しています。現在の米国において、「他人は信頼できる」と考えている人は、わずか34%にとどまります。信頼感を取り戻すには、生身の人が意識的にやりとりをする交流の機会を増やす必要があります。具体的には、近所の人と話す、食事を共にする、市民によるイベントに参加する、といったことです。

今、早急に取り組むべき課題は、人のつながりを強化する場を設ける取組みを始めることです。まずは、人と人とのつながりは、測定可能な社会的利益だと捉えることから始めましょう。つまり、生活を支えるほかの重要インフラと同レベルの計画や投資が必要なものとして捉える、ということです。これは「より多くの仕事をこなすためにAIを使う」という目先の罠から抜け出すことを意味します。人がAIを使うことで自由に使えるようになった時間は、「配当」として、同僚や近所の人、友人、家族との現実世界における関係に再投資すべきです。

社会全体の結束を取り戻すために

社会全体の結束を再び構築するには、さまざまな分野を巻き込んだ取組みが必要になるでしょう。理想を言えば、テック系のイノベーターたちは、人間性を開花させ、社会活動を促進する構想を最優先すべきです。同時に、非営利組織(NPO)や地域社会のリーダーは、社会的ネットワークを修復する地域プロジェクトの規模を拡大するため、リソースを必要としています。例えば、異なる世代間の理解を促すプログラムや、地域住民が集まるプロジェクト(近くに住んでいる人たちが関係を深めて、本当の意味での帰属意識を育むもの)です。

具体例を挙げると、ワークデイ財団では、民間団体である「全米コネクション会議(The US Chamber of Connection)」のパートナーと共同で、「大義としてのつながり(Connection as a Cause)」というパイロットプログラムを立ち上げました。これは、当財団の母体であるワークデイ(Workday)の従業員に地域社会の「つなぎ役」となるよう促すものであり、従来のボランティアの定義を押し広げる先進的な試みです。近隣の人たちのために奉仕するだけでなく、積極的に働きかけて、本物の人間関係を築くという目的があります。つながり構築のための活動を企画すれば、その効果は、「参加者の気分が高まる」だけにとどまりません。機能する地域社会や、繁栄する経済に不可欠な、人々の信頼や一体感を構築することにつながるからです。

私は、リーダーたる者は、人と人とのつながりが、もはや「あれば嬉しい」というレベルではなく、ビジネスに不可欠な要素であることを認識してほしいと望んでいます。明るい未来を築けるかは、「人間優先のアルゴリズム」を率先して取り入れられるかどうかにかかっています。そうしたプロセスは、無秩序で扱いにくく、摩擦に満ちています。しかしその一方で、人を互いに結びつける、実り多いプロセスでもあります。皆さんにもぜひ、この運動に加わっていただけたらと思っています。

筆者のキャリー・ヴァロキエ(Carrie Varoquiers)氏は、クラウド型エンタープライズ・ソフトウェアの世界的プロバイダであるワークデイの最高慈善活動責任者です。

この記事は、Fast CompanyのCarrie Varoquiersが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。