【大人の新・金融教養】暗号資産は「投機」から「実用」へ。知っておきたい5つの誤解

株式会社第一ライフグループ

    デジタル資産経済はこの10年間で、4兆ドル(約640兆円)規模のエコシステムへと成長を遂げました。しかし、大半の人々にとって暗号資産とは、一杯のコーヒーを買うのも躊躇するほど、技術的なハードルを感じさせる存在です。企業がサプライヤーへの支払いに利用する場合は、なおさらでしょう。

    その主な要因は、暗号資産という分野が、金融インフラとしての実用性よりも、メディアを賑わすような相場の変動で注目されている現状です。

    暗号通貨の利用が進まない背景には、多くの場合、以前から続くさまざまな誤解があります。デジタル資産を投機的なサブカルチャーと捉え、グローバルな電子商取引に役立つ標準的なオーケストレーション・レイヤーとは見なさないという誤解です。

    金融の世界において、トークン化銀行預金(bank tokenized deposits:銀行の預金を、ブロックチェーン上で扱えるデジタル・トークンに変換したもの)とパブリックチェーン資産(中央管理者が存在せず、誰でも自由にアクセスできるオープンなブロックチェーン上で発行・管理されるデジタル資産)が共存する多極化への移行が進むなか、市場におけるノイズと、インフラとしての実態を区別できない事業者は、旧式の非効率なシステムに縛られ続けるリスクを負うことになります。

    こうした一筋縄ではいかない状況を整理して明確な道につなげるには、グローバルな決済スタックの現代化を阻んでいる、次の「5つの誤解」に惑わされないようにすることが肝心です。

    誤解1:デジタル資産による決済は、リアルタイムの商取引には遅すぎる

    ブロックチェーンには、取引が確定するまで数分から数時間待たされるというイメージがつきまとっています。確かに、分散型ネットワークの初期段階はそうだったかもしれませんが、レイヤー2スケーリングや高スループットのステーブルコイン・インフラの登場によって、遅延の問題は事実上解消されています。

    現在のデジタル資産決済は、取引確定までの速さという点で、従来のクレジットカードネットワークを確実に上回っています。旧来のシステムはたいてい、銀行の営業時間や、手作業の清算プロセスに依存しており、取引が数日間にわたって「保留」状態になることもあります。

    例えば、金曜日の午後5時半以降に送金を受けたとしても、土曜日と日曜日には銀行が営業しておらず、さらに月曜日も祝日であれば、翌週の火曜日まで着金を確認できない可能性があるのです。

    これに対して、ステーブルコインの決済レールでは、24時間365日いつでも決済を確定できます。自動化されたスマートルーティングと、潤沢な流動性プールを活用することで、価格変動リスクにつながるタイムラグ(時間枠)が解消されているため、事業者は即時に流動性を確保し、運転資金へすぐにアクセスできるようになります。

    誤解2:暗号資産を受け入れると、経理部門の業務に負担がもたらされる

    最高財務責任者(CFO)が抱く主な懸念の一つは、デジタル資産の統合によって、既存のシステムスタックの全面的な刷新を余儀なくされ、ERP(統合基幹システム)や税務処理、経理のワークフローに支障が生じることです。しかし現実的には、CFOがおそれる必要はありません。現代の暗号フィンテックは、既存システムを破壊するものではなく、補完するものだからです。

    今や、高度なオーケストレーション・レイヤーが、既存の決済フローと並行して機能しています。既存のフローを変更することなく、APIやCSVを介してシームレスに統合されるのです。バックオフィスにとってのいわゆる「悪夢」は、補助簿処理の自動化と、リアルタイムでの法定通貨への換算によって解消されており、経理部門は、基盤となるデジタル資産に直接触れたり管理したりすることはありません。

    口座には通常の法定通貨で入金され、同時に「NetSuite」や「SAP」「Sage」といった既存のERPロジックに直接マッピングされたデータフィードが提供されます。取引が「保留」から「確定」へと瞬時に移行するため、結果として、企業のキャッシュフローをよりクリアに、リアルタイムで可視化できるようになります。

    誤解3:デジタル資産の利用者は、テクノロジーに詳しいニッチな層に限られる

    デジタル資産を利用している人を想像してみてください。「パタゴニア」のキルティングベストを着て、手首よりも分厚い腕時計を身に付けているような、典型的な暗号資産投資家の姿が思い浮かぶのではないでしょうか。なぜなら、先進的なテックハブ(技術拠点)にいる、暗号資産に精通した人だけが、投機的な取引のために暗号資産を利用しているといった思い込みがあるからです。

    そのような人々が存在しないとは言いませんが、データが示しているように、暗号資産の成長が実際に見られるのは、実用性、とりわけグローバルな金融包摂(誰もが基本的な金融サービスを受けられる状態)という文脈においてです。

    ラテンアメリカ、アフリカ、東南アジアといった地域をはじめ、銀行口座を持たない世界中の14億人の人々にとって、デジタル資産は、日常的な商取引やクロスボーダー決済の主要な手段となりつつあります。このような利用者は、「投資対象としてのデジタル通貨」を求めてはいません。地域の銀行システムが十分に機能しないなかで、世界経済に参加するための手段を必要としているのです。

    プログラマブルマネー(プログラム可能な通貨)への移行は、小売商などにも見られます。プログラマブルマネーによって、スマートコントラクトベースのロイヤルティプログラムや自動報酬システムなど、従来のレールでは技術的に不可能だった機能を構築できるようになります。その結果、生涯価値(LTV)の高い顧客層を世界中から取り込めるようになるのです。

    誤解4:取引処理のコストが高いため、少額の取引が成り立たない

    デジタル決済に対する懐疑論の多くは、それを動かすのに必要な「ガソリン代」、つまりブロックチェーン上で取引を処理する際のコストに向けられています。レイヤー2ソリューションによって、こうしたコストはすでに1セントの数分の1にまで低下していますが、取引手数料だけに目を向けると、より広範な運用面での投資対効果(ROI)を見落とすことになります。

    電信送金のような従来型のシステムは、依然として時代遅れの手動プロセスに依存しており、ボトルネックとなっています。そのため、JPモルガン(J.P. Morgan)やファイサーブ(Fiserv)のような大手金融機関までもが、資金を高速で移動させるための新たなグローバル標準として、ステーブルコイン決済にますます注目しています。

    このような決済レールを導入した事業者は、取引ごとに支払うわずかなコストを削減しているだけではありません。自動化されたインフラを手に入れ、手作業による介入、照合ミス、資金の回収遅延がもたらす隠れたコストを排除しているのです。

    誤解5:デジタル資産の決済ネットワークは、規制のない「無法地帯」である

    多くの人は、「暗号資産」と聞くと、詐欺などの犯罪行為に近接した世界を想像します。しかし実のところ、「従来型の決済システムの方が本質的に安全だ」という認識は、長年にわたって張り巡らされてきたガードレール(保護策)が見せる、一種の錯覚にすぎない場合がほとんどです。

    デジタル資産は、事業者が顧客の口座から資金を引き出す従来の「プル型」取引では実現できない、高いレベルの透明性をもたらします。

    従来のシステムは、チャージバック詐欺に悩まされることが多く、事業者向け決済サービスに数十億ドル(数千億円)規模の損失をもたらしています。これに対して、デジタル資産の取引は「プッシュ型」で、取引は公開台帳上で確定されます。そのため、取引のライフサイクル全体を追跡し、資金の出所を完全に把握することが可能です。

    したがって、セキュリティとは、ブロックチェーン自体の問題ではなく、ガードレールの問題です。マネーロンダリングの自動検証や、KYB(企業確認)とKYC(本人確認)のプロトコルなど、金融機関レベルの保護策をブロックチェーンに適用することで、事業者は、第三者の仲介機関に頼ることなく、完全な透明性を持って取引の正当性を検証できるようになります。


    標準化への道筋

    現代の決済システムの目標は、伝統的な銀行システムを破壊することではなく、従来のシステムと、急成長するデジタル経済の橋渡しをすることです。事業者に対して、個々の銀行の複雑なトークンレールを使いこなすことを求めないのと同じように、断片化した暗号資産レールを管理するよう求めるべきではありません。

    インフラ・プラットフォームは現在、普遍的な翻訳機の役割を果たしており、決済エコシステムでデジタル資産を直接扱えるようにしながら、ほぼリアルタイムの法定通貨決済を実現して、事業者の収益を保護しています。

    テザー(Tether)やキャンターフィッツジェラルド(Cantor Fitzgerald)といった企業との連携を通じて、機関投資家レベルの信頼を確立してきたことで、このような高速の決済ネットワークがようやく商取引の主流となりつつあります。最終的には、これは単なる技術的な進化にとどまらず、すぐに現金化できるという確実性と、それに伴う安心感を事業者にもたらします。

    今や、ボトルネックとなっているのは、導入されている技術ではありません。すでに目の前にある機会をつかみ取るのを妨げる「誤解」なのです。

    この記事は、TechRadarのCarl Grimstadが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。