汚れたテムズ川が「心のオアシス」に変わるまで 〜環境保護とメンタルヘルスを繋ぐコミュニティの力

株式会社第一ライフグループ
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ロンドン市内を流れるテムズ川で泳ぐ私たちのことを、変わった人たちだと思う人もいるでしょう。まるで自分が川に飛び込んだかのように身震いしながら、「寒くないの?」と、彼らは尋ねます。もちろん寒いです──というより、寒さを感じること自体が目的なのです。冷たい水に入ると、中枢神経系を刺激し、頭を再起動してくれます。

「汚くない?」と尋ねる人もいます。確かに汚い時もあります。特に、雨の後はひどいものです。そんな時、私たちは川に入る代わりに、怒りの声を上げます。汚染レベルを測定し、テムズ川に下水を流す水道会社の操業慣行を糾弾するため、署名を集めるのです。

本当のことを言うと、川面が黄色く泡立っている日や、水面下の自分の手が見えないほど水が濁っている日はいくらでもあります。そんな日は、犬たちでさえ川に入ろうとしません。

しかし、実際に川に入って泳ぐことはしなくても、私たちと同じくらい水辺や川を愛する人々は大勢います。私たちの共有財産であるはずの川が、民間企業によっていいように扱われてきたことに、多くの人が不満を募らせてきました。だからこそ、テムズ川に初めて指定遊泳区域ができたことは、たった1地点の話とはいえ、コミュニティが企業に、市民が民営化推進派に、貴重な勝利を収めた瞬間のように感じられるのです。

数年前、テムズ川は苦しんでいました。大量の下水や農業流出水が流れ込み、生物多様性は瀕死状態でした。ほんのひと握りのスイマーや釣り愛好家が警鐘を鳴らしてはいたものの、聞こえないふりをするのはあまりに容易だったのです。

しかし近年、諦めることを知らない勇気あるジャーナリストの告発や市民の運動により、水質汚染への関心は劇的に高まり、政府と産業界は、この問題の解決に向けた一歩を踏み出しました。

遊泳区域の指定は、こうしたステップの一つです。この指定により、当局は厳密な水質検査を定期的に実施する義務を負い、まさに下水のような水質である時にはその事実を認めざるを得なくなったのです。水道会社テムズ・ウォーター(Thames Water)には、汚染の原因となった操業慣行を改めるよう圧力がかかるでしょう。ついに、潮目が変わりつつあるのです──私たちが勝ち取った小さな遊泳区域が、実際に潮汐の影響を受けるわけではありませんが。

告白すると、数年前に初めてテムズ川に入った時、私は少々居心地の悪さを感じました。私が公衆の面前で服を脱ぐかたわらで、スーツに身を固めた通勤者たちは、列をなして駅へと歩いていました。脱いだ靴下をブーツに突っ込み、服を地面に置く隣では、冬物のコートをまとった人たちが犬を散歩させていました。寒さに震えながら水着姿で桟橋を進むと、交尾していたガンのつがいが、怪訝な顔で私を見つめていました。

いざ水に入ると、あまりの冷たさに、皮膚の下の骨がどこにあるかまで感じられる気がしました。私の“プライベート”な部分は、ケイパーの酢漬けのサイズにまで縮み上がり、体内にめり込むように思えました。川面は波立ち、桟橋をしぶきで濡らし、まるで水そのものさえ、寒さから逃げたがっているかのようでした。

飛び込んだ時の感覚はたとえようもありません。一瞬にして思考が停止しました。いつもは1分間に91個も考えごとをしているような私が、無の境地に立ったのです。テムズ川での遊泳は、ボロボロだった私のメンタルヘルスに、計り知れない影響をもたらしました。

しかし、遊泳を始めた理由が心理面でのリフレッシュだとしても、それを続けられている理由は仲間たちです。コロナ禍のなか、少数の勇気ある人たちが、2人組か3人組をつくり、ソーシャルディスタンスを保ちつつ、テムズ川で泳ぐようになりました。そして、少しずつコミュニティが育ち始めました。それが、マーリーン・ローレンス(Marlene Lawrence)という地元の女性を中心に精力的に活動する「テディントン・ブルーティッツ(Teddington Bluetits)」です(「テディントン地区で活動するアオガラ(Bluetit)たち」という意味ですが、「凍えて青くなったおっぱい」という下ネタの意味も含まれています)。

マーリーンは、川と水泳を愛しています。「体のリセットのようなものです。世界を制したような気分になれます。以前に患っていた炎症は落ち着きましたし、体型もすっかり変わって、いまは自分の体にとても満足しています。朝一番に川で泳いだ後は、いつも良い1日を過ごせるんです」と彼女は言います。

遊泳区域の設置という朗報について、マーリーンはこう述べています。「水泳コミュニティの大勢の仲間たちだけでなく、川を利用するすべての人にとって、すばらしいニュースです。環境局が水質検査を増やすことで、テムズ・ウォーターが下水流出の抑制に努めるようになることを期待しています」

コミュニティに参加する理由はさまざまです。水泳が目的の人もいれば、冷たい水に体を浸したときの強烈な感覚の虜になった人、四季折々の自然の変化を感じたい人もいます。時折用意される、無料のケーキとドリンクが目当ての人もいます。

しかし、ほとんどの人は仲間が欲しいのだと私は思っています。冷たい水に入るたびに一緒に笑いあえる誰か、この孤独な街で話を聞いてくれる誰かが、ここにはいます。

最近、私はふと思いました。これこそが、コミュニティの本質なのではないか、と。それは、あらゆる社会的背景を持つ人々が集まって、それぞれが自立しつつ、互いの話を聞き、傷を癒やすのに手を貸す場。個々の集まりを超えた大きな存在であり、私たちが進んで参加し、自分にできる範囲で何かを与え、誰かを助けることで、より大きくなっていくものなのです。

この40年間、私たちはこうしたものを少しずつ失い続けてきました。並行して、私たちの共有財産である森や河川敷、公園や都市緑地は分断され、フェンスで囲われ、個人に売却されていきました。かつての広大なアウトドア空間は、どこもかしこも立入禁止になり、公共やコミュニティの意識は薄れ、私企業や個に取って代わられてしまったのです。

だからこそ私たちは、テムズ川に遊泳区域ができたことを盛大に祝福するのです。ドリンクを満載したカートの出番です。「WhatsApp」グループには、未読通知が130件も溜まっています。ドイツのテレビ局が取材にやってきて、服を脱ぐ私たちを撮影するのは、そうそうあることではありません。ミュージシャンのフィアガル・シャーキーまで顔を出してくれました。

ある朝、通りすがりの男性が、「正気かい?」と声をかけてきました。

それに私たちはこう返しました──「ありがとう」

Mark Rice-Oxleyは、元『ガーディアン』紙のエディター。現在は自身のブログ「Headstrong」で、メンタルヘルス問題への対処法について執筆しています。

この記事は、The GuardianのMark Rice-Oxleyが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。